診療支援
治療

鎖骨頭蓋異形成症
Cleidocranial dysplasia
瀬川 裕子
(東京医科歯科大学 助教)

【疾患概念】

 鎖骨頭蓋異形成症(cleidocranial dysplasia)は,主に鎖骨・頭蓋骨・歯の形成に異常をきたす,常染色体優性遺伝の疾患である.鎖骨の低形成や欠損,頭蓋骨の頭蓋縫合閉鎖遅延や大泉門開大,特徴的顔貌,歯牙萌出遅延や過剰歯などの歯科的合併症が特徴的である.そのほか,低身長,骨粗鬆症,側弯症,扁平足,外反膝,短指症,狭骨盤,聴力障害や中耳炎・副鼻腔炎などの耳鼻科的合併症も認める.鎖骨が低形成のため左右の肩を極端に寄せることができる.特徴的な顔貌は,頭蓋骨の横径拡大(逆西洋梨形の頭蓋),前頭部突出,眼間開離,平坦な鼻梁,上顎骨の低形成などによる.転写因子であるRUNX2の変異が原因であるが,約30%の症例では異常を認めない.

【頻度】

 100万人に1人程度である.


単純X線所見

 頭蓋骨には頭蓋縫合閉鎖遅延,大泉門の開大,wormian boneなどを認め,鎖骨には欠損や形成不全がみられる(図7-39).そのほか,恥骨の骨化遅延や恥骨結合の開大,大腿骨や脛骨における大きな骨端核,手足の中手(足)骨近位のpseudoepiphysis,末節骨低形成,大きな骨端核などの所見がみられる.


診断のポイント

 歯科や耳鼻科疾患の既往歴,両肩を極端に寄せられること,特徴的な顔貌などが診断のポイントである.


治療方針

 骨形成異常は通常日常生活で支障とならず,鎖骨も1/3程度残存していれば予後はよい.鎖骨の低形成により,幼少期には肩関節前方挙上の際に体幹を反らせて手を挙げる動作がみられるが,成長とともに機能は改善することが多い.重要なのは歯科的ならびに耳鼻科的合併症に対する治療であり,整形外科で本疾患を診断した場合には,歯科,耳鼻科への紹介が必須である.頭蓋縫合閉鎖不全や大泉門開存の程度により,ヘルメットによる頭部保護を検討することがあるので,脳神経外科にもコンサルトする.女性で

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