診療支援
治療

Apert症候群
Apert syndrome
高木 岳彦
(国立成育医療研究センター 診療部長〔東京都世田谷区〕)

【疾患概念】

 頭蓋縫合早期癒合による尖頭と,高度な手足の合指(趾)症を主症状とする,尖頭合指症(acrocephalosyndactyly)に分類され,10番染色体に位置するFGFR2遺伝子の異常により発生する.頭蓋縫合早期癒合,眼球突出,特異顔貌などが特徴で,同じ尖頭合指症に分類される,Pfeiffer症候群やCrouzon症候群などでもそれらの特徴を認めるが,特に対称的で高度な手足の骨性合指(趾)症を認める.

【頻度】

 常染色体優性遺伝形式をとる遺伝性の疾患であるが,そのほとんどがFGFR2遺伝子の突然変異による孤発例である.発生頻度は報告により100万出生に6~15.5人とされている.

【臨床症状または病態】

 頭蓋縫合の早期癒合により,頭の前後径が短く上方に長くなる尖頭や,眼球突出などにより特徴的な顔貌を呈する.手足では骨性合指(趾)症,指(趾)節癒合症が主症状であるが,特に末節骨が先端で骨性に癒合し爪も癒合する症例も多く,手はバラのつぼみ状の外観(rosebud appearance)を呈する.


必要な検査とその所見

 単純X線画像により頭蓋骨前後径の短縮,頭蓋縫合早期癒合,骨性合指(趾)を認める.


診断のポイント

 上記のような特徴的な頭蓋形態・顔貌と高度の骨性合指(趾)症を認め,それが診断のポイントとなる.


治療方針

 頭蓋縫合早期癒合に伴う脳の発達への影響を避けるため,頭蓋形成術などがまず優先される.手足の合指(趾)症に対しては,その後1歳以降に整容面,つまみ動作の獲得のための機能面の改善を目的に,分離術が施行される.


手術療法

 整形外科(手外科)が担当するのは手足の合指(趾)症に対してであるが,母指示指間(第1指間)の形成を優先して分離を行う.すべての指間形成を行う場合は,通常の合指症の治療方針に従い,母指示指間と中指環指間,次いで示指中指間と環指小指間と分けて行うことが多い

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