診療支援
治療

周期性四肢麻痺
Periodic paralysis
久保田 智哉
(大阪大学大学院 准教授(臨床神経生理学))

【疾患概念】

 骨格筋に発現するイオンチャネルの機能異常によるチャネル病の1つで,麻痺発作を主症状とする.

【頻度】

 大規模な疫学データはない.臨床現場で遭遇する頻度が高いのは,甲状腺機能亢進症が合併する甲状腺中毒性周期性四肢麻痺(TPP)である.遺伝性はまれだが,軽症潜在例がいると考えられる.

【病型・分類】

 臨床的には,麻痺発作時の血清カリウム(K)値により,低K性と高K性とに分類される.病因による分類では,遺伝性と二次性とがある.遺伝性は,遺伝性高K性(HyperPP),遺伝性低K性(HypoPP)とAndersen-Tawil症候群(ATS)に分類され,いずれも常染色体優性遺伝である.二次性では低K性が多く,TPPが最多で若年男性に多い.その他,アルコール多飲,内分泌異常(原発性アルドステロン症,Addison病,Cushing病など),腎尿細管機能異常(Bartter症候群,Gitelman症候群など),薬剤(甘草・利尿薬など)によるものなどがある.

【臨床症状または病態】

 麻痺の程度は,筋力低下から完全弛緩性までさまざまで,下肢に強く,呼吸嚥下障害は出現しにくい.感覚障害や膀胱直腸障害はない.HypoPPの麻痺発作は,思春期に初発し,数時間から数日持続することもある.典型的な発作は,「前日の激しい運動や食べ過ぎで,翌朝体が動かない」ことである.HyperPPの麻痺発作は10歳以下で初発し,短時間で自然軽快することが多い.発作間欠期には,眼瞼に軽いミオトニーを合併し,寒い日などに目が開けにくいことがある.典型的な麻痺発作は,「朝食前に生じ15分から1時間ほど持続したのち消失」する.ATSは,四肢麻痺発作,心電図異常,小奇形(小顎,眼間開離,第5指弯曲など)を3徴とするが,不全型も多い.10歳前後に,失神や心電図検診,麻痺発作で発見される.麻痺発作は低K性が多いが,正・高K

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