診療支援
治療

異所[性]骨化
Heterotopic bone formation
矢吹 さゆみ
(東京都立北療育医療センター 医長〔東京都北区〕)

【疾患概念】

 異所性骨化とは,正常骨格以外の部分に成熟骨組織が形成された状態をいう.骨梁構造を認める点が石灰化との違いである.原因は不明であるが,発生契機は,外傷,術後,脳・脊髄障害後,熱傷,透析などがある.

【頻度】

 報告者により異なるが,上述の契機に伴い約20~30%に発生するとされる.好発部位は骨盤,股関節,膝,肩,肘関節である.

【臨床症状と所見】

 急性期は局所の腫脹,熱感,疼痛,発赤がみられる.亜急性期は局所の腫瘤と関節可動域制限がみられる.慢性期は腫瘤と関節可動域制限の増強がみられる.


鑑別診断で想起すべき疾患

 感染,血栓,塞栓症,石灰化,骨・軟部腫瘍,複合性局所疼痛症候群,進行性骨化性線維異形成症()がある.


必要な検査

 血液検査では,ALP・CPK上昇,赤血球沈降速度亢進がみられる.なかでもALPは臨床症状が現れる前から上昇し,約10週間で最高値に達する報告がある.単純X線は初期には異常陰影はなく,3~4週間後に淡い石灰化様陰影のみが確認される.以降は雲状などの不定形な骨陰影が出現する.単純X線で異常所見が現れない早期には骨シンチグラフィーが有用である.


保存療法・手術・薬物療法

 保存療法としては,骨化がみられた場合,もしくは疑われた場合は可動域訓練を中止し,局所の炎症が収まり次第,愛護的な訓練を行う必要がある.手術は,発生後6か月以内に行うと再発しやすいため,骨化の成熟する発生後9~12か月以降がよいとされる.薬物療法はインドメタシン,エチドロン酸二ナトリウム内服の有用性が報告されている.海外では罹患関節周囲への放射線照射による発生予防に関する報告もある.


合併症と予後

 保存療法でも疼痛の消失,骨化の縮小は期待できる.また,適切な時期に愛護的操作の下で骨切除,授動術を行えば,ある程度の可動域制限が残存しても多くは症状の改善が見込める.一方で骨切除術後の再発の報告も

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