サルコペニア(sarcopenia)は,ギリシャ語で筋肉を表すsarxと喪失を意味するpeniaを組み合わせた造語であり,1989年にRosenbergによって提唱された概念である.当初は,加齢とともに変化する筋量のみに注目した定義であった(Baumgartnerら,1998年)が,近年は筋量減少に伴う筋力や身体機能低下の意義が強調されるようになり,さまざまな定義と診断基準が提案されている.
2010年にEuropean Working Group on Sarcopenia in Older People(EWGSOP)からサルコペニア診断のための骨格筋量指数による筋量,握力による筋力,簡易身体能力バッテリー(SPPB)あるいは歩行速度による身体機能のカットポイントが発表されたのに続いて,2014年にアジアの疫学データを基にしたAsian Working Group for Sarcopenia(AWGS)基準が発表された.2018年にはEWGSOPの診断基準が改訂され,筋量に骨格筋量が,筋力に椅子立ち上がりが,身体機能にTUG(timed up and go)・400m歩行テストが追加され,これらのカットポイントが用いられるようになり,サルコペニア診断のアルゴリズムも変更された.2017年には日本サルコペニア・フレイル学会から「サルコペニア診療ガイドライン2017年版」が発行され,サルコペニア予防のためには,適切な栄養摂取,運動習慣,豊富な身体活動を推奨し,サルコペニア治療のためには運動や栄養による単独介入より運動介入と栄養補充を組み合わせる複合介入がより有効であると強調している.
一方,フレイルは,加齢に伴う予備能力の低下のためストレスに対する回復力が低下した状態を表すfrailtyの日本語訳として,日本老年医学会が2014年5月に提唱した用語である.フレイルは,要