【疾患概念】
濃厚な喫煙歴以外に既往のない40歳代前後の若年男性が,手指や足趾に冷感を伴う疼痛を訴えて来院した際に,まず疑うべき疾患である.一般的には動脈疾患という印象がもたれているが,実際には中小径の静脈に対しても非動脈硬化性分節的炎症性病変をきたす.しかし患者の受診行動につながるのは主に動脈病変の存在であり,進行に応じて四肢末端部の冷感から安静時痛,そして潰瘍形成・壊死,指趾欠損と進行する.一方で末梢側からの進行が特徴的であるため,四肢大切断まで至ることは少ない.喫煙人口の減少とともに近年罹患者数は減少傾向にあるが,早期発見・早期治療が重症化の予防に最も重要であるため,日常診療を行ううえで忘れてはならない疾患の1つである.
問診で聞くべきこと
何よりも喫煙歴の聴取が重要である.罹患者の平均喫煙期間が23年間だったという報告もある.身体所見では冷感や疼痛といった動脈系症状以外に,四肢表在静脈の血栓性静脈炎(遊走性静脈炎)の確認も行う.
必要な検査とその所見
①四肢脈拍触知:末梢動脈から侵されやすいという特性上,上肢では橈骨動脈や尺骨動脈,下肢では足背動脈や後脛骨動脈拍動が消失している一方で,より中枢側の動脈拍動は保たれている場合が多い.
②血液検査:本疾患に特異的なマーカーはないが,炎症の程度を反映して白血球・赤血球沈降速度・CRPの上昇がみられることがある.膠原病除外のために,各種自己抗体などの測定も必要である.
③足関節上腕血圧比(ankle-brachial pressure index;ABI):下肢病変において足関節レベル以上の動脈に病変が存在する場合は低値となるが,より末梢に限局した状態では正常値を示すことも多い.
④皮膚潅流圧測定(skin perfusion pressure;SPP):潰瘍や壊死の存在する指趾でも測定可能であり,ABIではとらえられないより末