【疾患概念】
動脈硬化により慢性的な動脈内腔の狭窄や閉塞をきたし,下肢を主体とした四肢に虚血症状を呈する疾患である.近年より広義な疾患概念である末梢動脈閉塞症(peripheral arterial disease;PAD)の名称を用いる機会が増えたが,これには数%の膠原病や閉塞性血栓血管炎(Buerger病)による四肢虚血も含まれている.
【臨床症状】
大動脈・腸骨動脈,大腿動脈・膝窩動脈,下腿の3動脈に至る下肢動脈に狭窄や閉塞を認めた場合,さまざまな下肢の虚血症状を呈する.重症度を示すFontaine分類はよく知らており,冷感・しびれ,間欠性跛行,安静時疼痛,潰瘍・壊死などの臨床症状がみられるが,必ずしもこの順に症状が増悪するわけではなく,下腿動脈に病変を有する場合により重症化しやすい.また,動脈閉塞による虚血が側副路により代償され,無症候であることも少なくない.男性,加齢,喫煙に加えて高血圧や糖尿病,脂質異常症がリスク因子となることはほかの動脈硬化性疾患と同様であり,虚血性心疾患や脳血管障害,慢性腎臓病などを合併することが多い.
問診で聞くべきこと
前述した背景疾患と動脈硬化性疾患の既往の有無,さらに四肢の虚血症状を聴取する.間欠性跛行例では,跛行が出現する部位と出現するまでの歩行距離・時間,さらに休息するまでの最大歩行距離のほか,腰部脊柱管狭窄症による神経圧迫症状との鑑別のため,前屈姿勢で症状が改善するか,また立位のみで疼痛が出現するかを聴取する.安静時疼痛例では,下肢を下垂できない就寝中に症状が悪化するか否かを聴取する.
必要な検査とその所見
(1)身体所見
視診により肢端の萎縮,爪の発育不良,発毛の左右差,皮膚の色調変化,筋肉群の萎縮の有無を観察する.虚血が高度になると蒼白からチアノーゼを呈し,静脈のうっ滞や虚脱,浮腫などもみられる.触診では肢端の皮膚温低下や動脈拍動(