診療支援
治療

運動器リハビリテーションの考え方
Principles of musculoskeletal rehabilitation
千田 益生
(岡山大学病院 教授(総合リハビリテーション部))

1.運動器疾患と健康寿命

 運動器とは,骨・関節・筋肉・神経などの体を支持したり動かしたりする組織・器官の総称である.運動器疾患とは,運動器の疾患,例えば,骨折,変形性関節症,腰痛,肩こり,骨粗鬆症,スポーツ障害といった疾患を意味する.健康寿命とは,健康上の問題で日常生活が制限されずに暮らせる期間である.2016年における健康寿命は,男性72.14歳,女性74.79歳であった.平均寿命が男性80.98歳,女性87.14歳ということを考えると,男性で8.84年間,女性で12.35年間が,要介護・要支援状態であったといえる.2019年の平均寿命は,男性81.41歳,女性87.45歳とより延長している.2020年版の高齢社会白書によると,介護が必要になった原因は,認知症が18.7%と最も多く,次いで脳血管疾患15.1%とあるが,運動器疾患である骨折・転倒12.5%および関節疾患10.2%を合わせると22.7%になり,認知症より多いことがわかる.2016年度の要介護者数は633万人と介護保険制度の開始から17年間で2.9倍になっており,厚生労働省は,2040年までに2016年に比べて男女とも健康寿命を3年以上延ばすことを目標にしている.健康寿命を延伸するためには運動器疾患を予防・治療することが最も重要である.


2.運動器リハビリテーションとは

 運動器疾患をコントロールし,二次障害を予防し,心身機能の回復・改善を目指し,生活における活動性を高めるリハビリテーション医療が,運動器リハビリテーションである.運動器リハビリテーションは,運動器疾患の診断,機能評価を行い,それらに基づいてリハビリテーション処方,そしてリハビリテーション治療を施行する過程全体を意味する.また運動器疾患に罹患する危険性を予見し,予防を行うことも運動器リハビリテーションの一環である.


3.運動器リハビリテーションの進め方

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