診療支援
治療

関節可動域テスト,徒手筋力テスト
Range of motion (ROM)testing, Manual muscle testing(MMT)
緒方 直史
(帝京大学 教授(リハビリテーション医学講座))

1.関節可動域テスト

【概要】

 関節可動域テストは,各関節が運動を行う際の生理的な運動範囲を計測する検査法で,各運動において関節可動域の制限があるかを調べることで関節機能を評価する.各関節のそれぞれの運動について健常人の可動域として参考可動域が定められており,関節機能に障害がある場合,関節可動域テストにて可動域制限の程度を判定する.自動あるいは他動による関節運動を計測するが,原則は他動運動での可動域を計測する.関節には球関節,鞍関節,蝶番関節などさまざまな種類があり,関節の動きの自由度は関節ごとに異なり,肩関節のように三次元的な運動が可能な関節がある一方で,膝関節など屈曲と伸展のみ可能な関節がある.関節可動域に制限がある場合,関節拘縮(joint contracture)と関節強直(ankylosis)があり,前者は関節包外(関節外の靱帯,筋腱,皮膚・皮下組織など)に起因し,可動域は低下するが保たれていることが多い.一方で後者は関節包内(線維性強直,骨性強直など)に起因し,可動域が消失していることが多い.


実施手順

 両足部の長軸を平行にした自然起立位での肢位が基本肢位(neutral zero starting position)で,解剖学的肢位とおおむね一致する.この基本肢位を0°として表示する.ただし,肩関節,股関節の一部の運動,前腕の回外・回内については異なる基本肢位を用いる.関節可動域は,十分な長さの柄がついている角度計(ゴニオメーター)を使用し,通常は5°刻みで計測する.関節ごとに外見上わかりやすい部位を選んで基本軸と移動軸が設定されており,基本軸と移動軸の交点を角度計の中心に合わせて計測する.


実施上のポイントと注意事項

 各関節の運動方向と名称を正確に理解するだけでなく,関節の基本軸と移動軸は股関節のように運動方向によって異なっている関節もあり,基本となる軸を十分に理

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?