診療支援
治療

ADL訓練
Training for ADL improvement
津田 英一
(弘前大学大学院 教授(リハビリテーション医学))

【概説】

 Activities of daily living(ADL)とは日常生活動作(活動)と訳され,独立して生活するために各人共通の毎日繰り返される基本的な動作(活動)を意味する.具体的には食事,整容,更衣,排泄,入浴などを指すことが多い.ADL障害とは日常生活上のさまざまな能力低下であり,その背景には原疾患による症状およびそれに起因する機能障害が存在する.さらにADL障害の内容や程度は生活習慣や住環境による影響を受ける.したがってADL制限に対する医学的アプローチでは,原疾患の治療,機能障害への治療,さらに実生活に適応するためのADL訓練が必要である.

【適応】

 整形外科領域でADL訓練の適応となる患者は,運動器の機能障害(変形,可動域制限,支持性不良,運動障害,感覚障害など)によりADL制限が生じているすべての患者である.ただし原疾患や合併症のためリハビリテーション中止基準(リハビリテーション医療における安全管理・推進のためのガイドライン)に該当する場合には,原則としてADL訓練は行わない.


実施上の原則

 ADL訓練を開始するにあたっては,まず機能障害およびADLの評価を行い,具体的な目標とそれに必要なADL訓練の内容を決定し,定期的に改善度・達成度を評価し訓練内容を再考する.ADLの評価方法は多数報告されているが,なかでもBarthel indexとfunctional independence measure(FIM)が広く用いられている.急性期のADL訓練では「できるADL」の評価としてBarthel indexが,回復期から生活期のADL訓練では外的要因の影響も考慮し「しているADL」を評価するFIMが適している.整形外科疾患では原疾患の治療により機能障害を残さず,簡単なADL訓練により日常生活への復帰が可能な場合も少なくない.逆に機能障害が残存した者に対して

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