診療支援
治療

関節拘縮に対する運動療法
Physical therapy for articular contracture
津田 英一
(弘前大学大学院 教授(リハビリテーション医学))

【概説】

 関節可動域の減少はその原因となる組織により大きく2つに分けられる.1つは筋,腱,靱帯,関節包,皮下組織,皮膚などの軟部組織の伸張性低下や短縮によって生じる関節拘縮であり,もう1つは関節自体を構成する骨や軟骨が骨性あるいは結合組織を介して病的に癒合して生じる関節強直である.関節拘縮に対しては関節可動域訓練を中心とした運動療法が適応となる.一方,関節強直に対しては隣接関節の可動域拡大による代償効果を期待して運動療法が行われることはあるが,癒合した関節自体の可動域改善には手術療法が必要である.

【適応】

 関節拘縮を生じたすべての関節に運動療法の適応がある.関節拘縮の主な原因としては,脳・脊髄・末梢神経疾患による運動機能障害,全身状態不良による不動,四肢外傷後や術後の固定などがある.前二者では関節拘縮が生じる前に予防として早期から運動療法を開始することが望ましい.一方,炎症反応が強い外傷後急性期,化膿性関節炎や血栓が不安定な深部静脈血栓症急性期への適応には慎重な判断が必要である.


実施上の原則

 不動化による関節拘縮が生じる過程において,初期の責任病巣は筋とされている.筋周膜,筋内膜の肥厚や筋内のコラーゲン含有量増加が生じ,筋の線維化により伸張性が低下するとされている.したがってこの時期には筋の伸張性改善に主眼を置いた徒手伸張訓練や持続伸張訓練,ストレッチが可動域訓練として有効である.この時期を過ぎると関節包にもコラーゲン線維の増生,密生化が生じ,関節包の伸張性低下により生理的な関節弛緩が減少し,いわゆる関節の遊びが失われた状態となる.この状態で通常の関節可動域訓練を無理に行うと,最終可動域で伸張性が減少した関節包が緊張し,てこの原理により関節軟骨には過剰な圧迫力が加わることとなる.したがってこの時期には,関節の生理的弛緩性を回復させる関節モビライゼーションの追加が必要となる.

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