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治療

温熱・冷熱療法の考え方と処方
Thermotherapy, Cryotherapy
城戸 顕
(奈良県立医科大学 教授(リハビリテーション医学講座))

 温熱・冷熱療法は,温度刺激に対する生体応答を利用する物理療法である.温度刺激による生体機能の活性化は,特に運動器疾患に対する低侵襲な保存療法として幅広く用いられ,単独または運動療法,薬物療法と組み合わせて行われる.主たる目的は疼痛コントロールである.


1.温熱療法

 温熱刺激はその深達度により表在性温熱と深部温熱に分けられる.また温熱の伝播様式により伝導熱,転換熱,輻射熱などに分類される.伝導熱はホットパックやパラフィン浴のように,生体に直接接してその熱を伝える.転換熱は生体内に入って熱に転換される様式で,極超短波や超音波などがある.また輻射熱を用いた治療には赤外線がある.温熱刺激により生体は,①軟部組織(筋,腱,関節包など)の伸張性増大,②痙縮の軽減,③疼痛閾値の上昇による疼痛の軽減,④局所血流の増加,⑤局所の組織代謝の促進などの効果を示す.温熱療法の適応には,筋骨格の疼痛,関節拘縮,筋痙縮,心身のリラクゼーション,運動療法の前処置などが挙げられる.

 温熱療法の禁忌を以下に挙げる.①意識障害のある患者,②感覚障害のある部位への治療,③局所の循環障害のある部位への治療(熱傷,相対的虚血による局所壊死などの危険性がある),④外傷,関節炎などの急性炎症,⑤悪性腫瘍のある部位(腫瘍増殖・進展を促す可能性がある).

 以下に代表的な温熱療法について述べる.

(1)ホットパック

 シリカゲルなどを木綿袋などに入れたものがホットパックである.これを80~85℃の恒温槽にて温めたのち,タオルなどで包んで患部に当て治療する.表在性の伝導熱を用いる.

(2)パラフィン浴

 パラフィンを用いた温熱療法である.50~55℃のパラフィン浴槽に患部をつける浴浸法と,パラフィンを局所に塗布する塗布法がある.浴浸法は主として上肢の遠位に用いる.パラフィンの熱伝導率は水の0.42倍のため熱さを感じにくく熱傷の危険性が

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