診療支援
治療

骨折・脱臼のリハビリテーション
Rehabilitation for fractures and dislocations
城戸 顕
(奈良県立医科大学 教授(リハビリテーション医学講座))

 骨折は何らかの原因で骨の生理的連続性が失われた状態,また脱臼は関節が生理的な範囲を越えて運動を強制され,関節面相互の適合性が失われたものと定義しうる.多くの場合,骨折または脱臼により受傷部には力学的に不安定な状態が生ずる.徒手整復操作により安定化しうると見込まれる場合は保存療法が選択される.一方,徒手操作のみでは安定化し得ない場合は手術治療の適応といえる.

 骨折・脱臼は純粋に力学的な過程であるが,同時に受傷直後からの出血,腫脹,浮腫を伴う生物学的反応を引き起こす.保存療法,手術治療のいずれを選択した場合でも局所ないしは全身的な安静が重要な役割を果たす.


1.安静の段階と種類

 全身的な安静には入院,自宅臥床,休業,休学といった段階がある.安静の種類としては,特定の動作の禁止,体幹や四肢のギプス固定,シーネや装具による局所の固定などがある.床上ではベッドアップ角度,端座位・起立・歩行の可否,(歩行器,松葉杖を用いた)起立時は免荷制限により安静の段階のコントロールを行う.骨折・脱臼の治癒過程において安静の段階と種類を適切にコントロールすることが,骨折・脱臼のリハビリテーション治療の本質といえる.


2.急性期からのリハビリテーション治療

 廃用を最小限にとどめるため,たとえ安静臥床が必要な場合であっても患部以外の関節や可動域の運動は床上にて積極的に行う.また損傷関節をギプス包帯などで固定している場合では,受傷関節の等尺性訓練や(固定されていない)隣接関節の積極的な可動域訓練を行う.


3.注意すべき基礎疾患・併存疾患

【1】骨系統疾患,腫瘍性疾患

 全身の骨に骨脆弱性をきたしうる骨系統疾患,原発性または転移性骨腫瘍による病的骨折などでは,通常の骨折治癒過程をたどらずまた他部位の多発骨折を呈することがある.

【2】認知機能障害

 認知機能障害の重症度によっては安静指示や荷重制限の理解が困難であり,ま

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