1.上肢装具総論
上肢装具の役割としては,治療のための安静,治療としての拘縮除去,機能的肢位の保持,リハビリテーションのサポートなどの役割がある.以下部位ごとに簡単ではあるが概説する.
【1】肩装具
肩装具は肩関節の動きを制御するもので,関節の保持,固定を行う装具が多く,代表的には外転装具やアームスリング(腕吊り)がある.
肩外転装具は腱板断裂,肩関節術後,腕神経叢麻痺などが適応となる.肩関節の外転位保持を目的とする.疾患や病態により,肩の外転角度はもちろん,上腕および前腕の位置が異なる.装着時のポイントとしては,腋窩や肘内側部の圧迫による神経障害,仙骨部や腸骨稜部の褥瘡形成などに注意する.
アームスリング・上肢懸垂用肩関節装具は脳卒中片麻痺の肩関節亜脱臼などが適応となる.三角巾のようにシンプルなものから,上腕カフと前腕カフの2つのカフがスリングにより連結されたものなどがある.シンプルなものは,肘関節の拘縮に注意が必要である.スリングで上腕-前腕のカフが連結されたものは,肩関節や肘関節は固定されずに,上腕骨頭の引き上げ効果が得られ,装着したまま可動域訓練も行うことができるのが特徴であり,装具固定による二次的な可動域制限を防ぐことができる.
肩甲骨保持装具は,前鋸筋麻痺による肩甲骨の下垂・内転や,胸郭出口症候群に用いられる.
【2】肘装具
肘装具は,治療のための安静や固定,拘縮除去,さらには支持性の保持のために作製される.
安静や固定のための装具は,骨折後,あるいは関節リウマチによる関節炎などの症例に用いられる.
拘縮に対する可動域改善が目的の装具としては,代表的なものとしてターンバックル式装具やタウメル継手付き装具がある.弱い力で時間をかけて矯正するのがポイントである.
支持性の保持のための装具としては,支柱付きの装具が用いられる.側副靱帯修復後,脱臼骨折後などで内外反ストレス