上肢切断者に対する義手の役割は,外観とごく一部の上肢・手指機能の代償であったが,近年手先具としての筋電義手の開発が進み,多機能の動作が可能となったものが実用化されている.処方する医師は義手についての専門的な知識を有する必要がある.義手の処方と装着訓練について,成人と小児に分けて治療指針を述べる.
1.義手の種類
【1】装飾用義手
機能よりも外観を重視した義手.手指関節可動性のあるパッシブハンドを用いれば,指の形を自由に変えることができる.
【2】能動義手
対側上肢帯・体幹の動きでケーブルを介して継手(関節)や手先具を操作する構造の義手.
【3】筋電義手(図10-7図)
筋電位を用いて電動ハンドを操作することができる義手.近年,手指の複雑な動きを再現できる機能を有した電動ハンドが開発・実用化されている.欧米先進国と比べると,日本では公的支給制度の違いもあり普及率は低い.
【4】作業用義手
機能を重視して種々の作業に適するように工夫された義手.能動・筋電義手で手先具が工夫されたものが一般的である.
2.成人に対する義手の処方と装着訓練
【1】切断レベルに応じた義手の処方
指切断では主に装飾用手指義手が処方され,前腕・上腕切断では装飾用・能動・筋電義手がそれぞれ処方される.腋窩レベルより近位の上腕切断や肩離断では装飾用・能動肩義手が処方される.
【2】切断者のニーズ・支給制度・能力などに応じた義手の処方
前腕・上腕切断や肩離断では,医師・義肢装具士・作業療法士などで十分に検討して切断者に適応となる義手の種類を決定し,処方する必要がある.
【3】前腕・上腕義手の装着訓練
入院による集中的な訓練が望ましい.まず切断端の機能訓練とともに,義手についての説明を行い切断者のニーズを把握し,処方する義手の種類を決定する.次いで断端に装着するソケットを製作して着脱訓練を行い,必要に応じて修正する.初めて製作す