診療支援
治療

脳卒中患者の在宅生活支援
Life support of stroke patients in home
川手 信行
(昭和大学 教授(リハビリテーション医学講座))

1.脳卒中患者における「生活期」

 脳卒中を発病からの時間軸で分類すると,「急性期」「回復期」「生活期(維持期)」に分類される.発症直後から行われる急性期リハビリテーション,回復期リハビリテーション病棟での集中的なリハビリテーションを経て,入院生活から在宅あるいは施設での生活などに移行する時点から「生活期」が始まる.「急性期」「回復期」の2つの期間が,合わせてもおおむね6か月以内であるのに対して,「生活期」は脳卒中患者にとってもっと長い時間を有する時期である.この時期は,脳卒中の病状は比較的安定した状態であるが,併存疾患や脳卒中再発,合併症発症防止の観点から,引き続き医学的管理が必要である.また,片麻痺や感覚障害,嚥下障害などの機能障害や,患者の起居・移動能力,日常生活動作(ADL)能力などの活動や社会参加は,常に同じ状態が続くわけではなく,生活のなかで変化することを念頭に入れ対応すべきである.例えば,脳卒中の症状の1つに筋痙縮があるが,生活期に増強し,足関節の内反尖足が増悪して,歩行能力が低下する症例はしばしば経験する.

 生活期の脳卒中患者においては,在宅での生活の問題や地域サービス体制などの問題,就学・就労の問題など地域社会とのつながりのなかでの問題が生じてくる時期である.脳卒中患者およびその家族が,住み慣れたところで,一生安全にいきいきとした生活が送れるよう,医療や保健,福祉および生活にかかわる人々や機関・組織が,リハビリテーションの立場から協力し合って,地域連携を含めた包括的な対応が必要である.


2.脳卒中患者と在宅生活支援

 生活期の脳卒中患者の生活支援の目的は,患者の機能を維持・向上し,活動・参加を促すことである.「脳卒中治療ガイドライン2015」においては,患者の筋力,体力,歩行能力を維持・向上させ,社会参加促進,QOLの改善をはかることが強く勧められており,そのた

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?