診療支援
治療

肩関節疾患のMRI診断
MRI diagnosis of the shoulder disease
谷口 昇
(鹿児島大学大学院 教授)

【概要】

 MRIは外傷においては,大結節の不顕性骨折と外傷後の腱板の病態を描出するほか,骨折後の阻血性壊死の診断にも役立つ.加えて,腱板損傷や肩関節不安定症での軟部組織の評価にも威力を発揮する.


1.腱板損傷の診断

 腱板損傷の部位を特定するうえで,非侵襲的なMRI検査は広く用いられ,腱板付着部の状況や筋腹部の性状を知ることができる.腱板損傷では腱板は肥厚して内部は不均一であり,FSE法を用いたPD(proton-density)強調像・脂肪抑制PD強調像では増強した信号像として検出される.完全断裂の診断は比較的容易で,T2強調像で滑液が貯留した非連続性の部位で表される.一方,1cm以下の小断裂や腱炎・腱症,不全断裂などを鑑別するのは一般に困難である.小断裂や不全断裂では,脂肪抑制T2強調像・脂肪抑制PD強調像で,一部連続性の途絶と関節液貯留が認められる.不全断裂には,関節面,滑液包面,腱内断裂が含まれるが,このうち関節面不全断裂では外転外旋位での撮影により,より鮮明に病変部が検出される.一方で腱炎・腱症では腱の連続性が保たれ,関節液貯留を認めないが腱内は高信号を呈する(図11-4).

 T1強調像・PD強調像では,腱や靱帯の長軸が主磁場に対して約55°の角度になった場合,“magic angle effect”というMRI特有のアーチファクトが生じることがある.これは棘上筋腱付着部で認めやすく,損傷と紛らわしい所見を認めることもあるため,T2強調像の画像と総合的に判断するのが望ましい.

 MRIは腱板断裂の筋性部の評価にも有用であり,これには脂肪抑制PD強調像やT2強調像が用いられる.断裂腱板の筋萎縮は,斜矢状断での筋断面積の縮小により判別できる.一方,筋内脂肪浸潤については,筋性部内に高信号の線状陰影がみられるほか,斜冠状断のT1強調やPD強調像においては,周囲の筋線維に比べ

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