診療支援
治療

肩疾患の超音波診断
Ultrasonographic diagnosis for the shoulder pathology
後藤 英之
(至学館大学健康科学部 教授(健康スポーツ科学科))

【概説】

 肩関節は腱,筋肉,関節包などの軟部組織に病変を生じることが多く,外傷を除けば骨,関節に病変を生じることはきわめて少ない.このような肩の軟部組織の病態を単純X線撮影で把握するのは困難である.単純X線撮影で診断可能な疾患は,石灰化腱炎,外傷に伴う骨折,脱臼,まれな疾患である変形性肩関節症などである.MRIは軟部組織および骨関節を正確に診断できる利点があるが,すべての肩疾患患者に実施することは不可能であり,医療経済的にも問題である.超音波検査の診断精度は飛躍的に向上しMRIに匹敵するものとなっており,局所の評価,動的評価,血流評価,弾性評価が可能であることも利点である.骨の被覆による影響や,深部組織評価の困難さ,機器や撮像技術による診断精度の差などの問題があるが,肩疾患の多くの軟部組織と骨,関節の微細変化の評価が可能であり,肩疾患の画像診断の第1選択となりうる.対象となる疾患は多岐にわたり,例を挙げると腱板断裂,肩峰下滑液包炎,上腕二頭筋長頭腱炎,上腕骨近位骨端線損傷,肩関節唇損傷,変形性肩関節症,肩鎖関節脱臼,肩関節周囲軟部腫瘍,肩甲骨周囲のガングリオンなどが挙げられる.また,動態評価を行うことで,関節周囲組織の滑走の確認,轢音やひっかかり現象の可視化が可能となる.またカラーDopplerやパワーDopplerモードの使用によって血流評価を行うことで炎症の程度,損傷の修復状態の評価が可能となる.さらに超音波ガイド下注射を行えば,より確実な治療と注射の効果判定による病態の把握も可能である.


1.適応

 肩関節の超音波検査で観察する組織は,腱板,上腕二頭筋長頭腱,関節唇,関節包,上腕骨頭および上腕骨近位骨端線,肩鎖関節,肩甲上神経,腋窩神経,三角筋,僧帽筋,肩甲挙筋,菱形筋などである.


2.種類

【1】撮像方法

 体位は座位とし肩関節伸展,外旋位とする(座った椅子の後ろの縁を持って

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