治療方針
腱板断裂には症候性(痛みや可動域制限)と無症候性が存在し,症候性の患者が治療の対象となる.保存療法によって効果がみられない症例が手術適応となるが,若年者(50歳以下)の腱板断裂では断裂の進行を考慮し,軽微な症状であっても積極的に手術治療が勧められる.また保存治療に効果を示さない安静時痛や夜間痛が強い症例では,早期に手術治療を選択する場合もある.腱板断裂が放置された場合,断裂サイズは大きくなり,腱板断裂後変形性関節症へと進行する.
【1】保存療法
疼痛に対して非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)やアセトアミノフェン薬薬の内服・外用薬投与や,肩峰下滑液包もしくは肩関節腔内への副腎皮質ホルモン,ヒアルロン酸の注射を行う.また神経障害性疼痛の関与が疑われた場合には,神経障害性疼痛治療薬を使用する.さらに肩甲帯部および腱板筋群の運動療法を行う.
約3~5か月の保存療法を行うことで多くの症例は症状の改善がみられるが,改善が十分でない患者は手術治療が必要となる.
【2】手術療法
痛みの原因(肩峰下滑液包内での衝突現象)と考えられる肩峰下骨棘や軟部組織(烏口肩峰靱帯)の肥厚の切除と滑腋包炎に伴う滑膜の切除を行う(滑膜切除).さらに一次縫合可能であれば断裂した腱板の修復を行うが,手術法として関節鏡視下手術や直視下手術が行われており,またその中間型である関節鏡視補助下での直視下小皮切腱板修復術も行われている.最近では関節鏡視下手術が一般的になりつつある.
一次縫合が不能な腱板断裂の場合,さまざまな手術法(鏡視下デブリドマン,腱板部分修復術,上方関節包再建術,パッチグラフト腱板修復術,腱移行術,反転型人工肩関節置換術,小径骨頭置換腱板修復術など)が報告されており,標準化された手術法はない.本邦では肩挙上不能の70歳以上の高齢者であれば,反転型人工肩関節の使用基準を満たすため選択肢の1つと
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