診療支援
治療

肩関節の鏡視診断と鏡視下手術
Arthroscopic diagnosis and surgery of the shoulder joint
菅谷 啓之
(東京スポーツ&整形外科クリニック 院長〔東京都豊島区〕)

1.肩関節鏡の歴史

 関節鏡は1959年に東京逓信病院の渡辺正毅先生が21号関節鏡という世界で初めて市販された関節鏡を開発したことに端を発する.1964年の東京オリンピックでカナダチームの帯同医師として来日したRW. Jackson先生が渡辺先生の元を訪れ指導を受け,彼がその技術を北米に持ち帰り,1970年以降膝関節を中心に北米で関節鏡が大きく普及した.その後,米国のSteve SnyderやJames Eschらが,1980年代の初めに細々と肩関節鏡を開始し,1983年に第1回San Diego Shoulder Symposiumを開催した.後にSteve BurkhartやBuddy Savoieなどもコアメンバーに加わり現在に至る.このシンポジウムでは毎年講演内容をビデオで販売していたが,筆者は1990年代後半からこのビデオで肩関節鏡を独学で学習した.

 一方,わが国では1980年代の後半に,当時大阪厚生年金病院の米田稔先生が日本に肩関節鏡を導入し,大阪大学系や札幌医科大学系の弟子筋の先生方を指導し,徐々に普及していった.また同時に,福岡大学,昭和大学藤が丘病院,東北大学などでも行われるようになっていった.筆者も1990年代中盤に肩関節鏡を開始し,1990年代後半からは積極的に反復性肩関節脱臼や腱板断裂に対して行うようになった.


2.診断的関節鏡

 肩関節鏡は導入当初は診断のツールとして考えられており,本邦導入当初の1990年代中盤までは,肩甲上腕関節の内腔を観察した報告などが学会などでも取り上げられていた.しかし,全身麻酔をかけて関節鏡を肩関節内に挿入し,診断だけで終わるのはあまりにも侵襲が大きいため,現在では通常,診断的関節鏡と手術は同時に行われる.膝関節より遅れて導入された肩関節鏡であるが,膝関節より自由度が大きいためにreconstructive surgery,す

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