診療支援
治療

肩関節上方唇損傷(SLAP損傷)
Labrum injury of the shoulder
岩堀 裕介
(あさひ病院スポーツ医学・関節センター センター長〔愛知県春日井市〕)

【疾患概念】

 上方関節唇損傷は,Andrewsらが投球競技者の関節鏡所見として初めて報告したが,後にSnyderが外傷による上方関節唇損傷をSLAP損傷(superior labrum anterior superior lesion)と命名して以来,その名称としてSLAP損傷を使用するのが一般的になっている.上方関節唇のみの障害の場合と,上腕二頭筋長頭腱(long head of biceps;LHB)との複合体(BLC)の障害,さらには前上方部関節唇に付着する上関節上腕靱帯(superior glenohumeral ligament;SGHL)や中関節上腕靱帯(middle glenohumeral ligament;MGHL)の機能障害の場合がある.

 発生機序としては,外傷性とオーバーユースにより生じるものに大別される.外傷性としては肩関節外転位で転倒して手を着く際の突き上げ,重量物の挙上,急激または不意な牽引,肩関節(亜)脱臼などにより生じる.オーバーユースによるものは投球障害に代表され,上肢をオーバーヘッドで繰り返し使用することにより生じる.具体的にはAndrewsらは,投球の減速期における上腕二頭筋の牽引により生じると報告した.WalchらやJobeらは,コッキング後期の外転外旋時に腱板関節面と上方関節唇が骨頭と関節窩の間に挟まれる,postero-superior impingementまたはinternal impingementをその要因として報告した.また,下関節上腕靱帯(inferior glenohumeral ligament;IGHL)やSGHL・MGHLの機能不全による潜在的前方不安定症,後方タイトネスによる外転外旋時の上方関節唇のpeel back phenomenonの関与の報告もある.Habermeyerらは,テニスや投球のフォロースル

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?