診療支援
治療

肩甲帯の先天異常
Congenital disorders of the shoulder girdle
池上 博泰
(東邦大学 教授)

【疾患概念】

 肩甲帯の先天異常には,Sprengel変形(肩甲骨高位症),鎖骨・頭蓋骨異形成症,先天性鎖骨偽関節,先天性大胸筋欠損症などが該当する.これらの異常は肩甲帯のみの場合もあるが,それぞれに特徴のある他の異常を合併している例も多い.具体的には,Sprengel変形には頚椎変形(Klippel-Feil症候群),心臓と手の先天異常(Holt-Oram 症候群),先天性食道閉鎖などが,鎖骨・頭蓋骨異形成症には頭蓋骨・椎骨・骨盤などの骨化不全などが,先天性胸筋欠損症には同側上肢の形成異常(Poland症候群)が合併していることも多い.

【頻度】

 肩甲帯の先天異常に関する発生頻度の報告は文献によってさまざまであるが,非常にまれな先天異常である.このまれな肩甲帯の先天異常のなかでは,Sprengel変形が最もよくみられ,男女比は1:2~3と女性に多く,左側にやや多く,両側例は約10%である.

【病型・分類】

 Sprengel変形では,外観上の変形程度をCavendishの分類によって判定する.

 Cavendish分類のgradeⅠはきわめて軽度の変形で服を着ているとわからない程度,gradeⅡは肩関節の高さはほとんど変わらないが服を着ていても肩甲骨の変形がわかる程度,gradeⅢは患側肩関節が健側よりも2~5cm高く変形の強い程度,gradeⅣは患側肩関節が5cm以上高く肩甲骨上角は後頭部に接近する程度である.

【病態】

 Sprengel変形は,胎児期に肩甲骨が脊椎から分化しきれなかった分化障害の結果として,肩甲骨高位と肩甲胸郭関節の拘縮がみられる病態で,頚椎と肩甲骨の間に肩甲脊椎骨とよばれる過剰骨が存在することが多い.頚椎の変形(癒合椎や脊椎破裂など)を伴うKlippel-Feil症候群との合併が多い.心臓と手の先天異常を伴うHolt-Oram症候群では染色体12q24に存在する

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