【疾患概念】
肩こりは項部から僧帽筋上部線維周囲にかけての痛みや張り,重苦しさを主訴とする疾患である.肩甲骨の内側や上角にも痛みを訴えることも多い.その原因としては主に僧帽筋上部線維の筋肉の過緊張や血行不良によって生じる筋の硬化であり,もんだり,叩いたりすると症状が和らぐ.欧米人には少なく,筋肉の質と量が日本人と欧米人では異なることが要因として考えられる.
【頻度】
2016年度の厚生労働省の有訴者数の調査では,肩こりは男性では腰痛に次いで2位で人口1,000人に対し57.0人,女性では1位で117.5人である.
【臨床症状と病態】
症状は僧帽筋部の痛みであることが多く,僧帽筋の筋腹が硬くなる.立位や座位で僧帽筋の上部線維は重い頭(約5kg)を支えている.頚部が15°前屈すると,僧帽筋への負荷は12kgに,30°前屈すると18kgになり,前屈角度が増すと僧帽筋に大きな負荷がかかる.また僧帽筋の上・中部線維は両上肢の重さ(約10kg)を支えている.腕の肢位によって筋肉にかかる負担は大きくなる.好発年齢は40~50歳代の中高年であるが,最近では小中学生でも起きる.前かがみの悪い姿勢での長時間のゲームやスマートフォンの使用により肩こりが生じやすい.重いランドセルや鞄の持ち歩きも原因の1つになっている.
【問診で聞くべきこと】
いつから肩こりが起こったのか,誘因となるような腕や肩の繰り返す動作や重量物の移動などを行ったか,眼精疲労があるか,パソコンでの作業時間が長いかなどを聞く.
【必要な検査とその所見】
(1)単純X線検査:頚椎2方向
①頚椎のアライメントをみる.側面像でストレートネック,後弯,S字状変形,正面像では側弯の有無をみる.アライメント異常があると,頭の重さを骨で支えるのに支障をきたし,僧帽筋などの頚部周囲の筋に負担がかかり肩こりが生じやすい.
②側面像で椎間板裂隙の狭小化や後方
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