診療支援
治療

肩のリハビリテーション
Rehabilitation for the disease of the shoulder
後藤 英之
(至学館大学健康科学部 教授(健康スポーツ科学科))

【概説】

 肩関節は支持性の少ない不安定な関節であり,筋肉の動的な安定化機構と,全方向性への関節包・靱帯による静的な支持機構のバランスによって安定化されている.また,腱,筋肉,関節包などの軟部組織に病変を生じることが多く,運動制限や滑走の障害から,不安定症までバリエーションに富んだ病態を示す.これらをリハビリテーションなくして治療を行うことは不可能である.治療に当たっては形態的診断のみならず機能障害や病態について把握し,病態に基づくリハビリテーションの計画を立てることが重要である.肩のリハビリテーションの目的は,正常な可動域の獲得と正常な筋力の回復のもとに,協調性を持った運動の獲得にある.


1.適応

 肩のリハビリテーションの適応範囲は広く,非外傷性および外傷性疾患,術前・後のリハビリテーション,スポーツ障害などほとんどすべてに適応がある.石灰化腱炎の急性炎症期や外傷や術後の安静固定が必要な時期は,愛護的に行う必要がある.


2.種類

【1】マッサージとリラクゼーション

 筋の緊張を取り,血行促進を目的に種々のマッサージ法があり,軽擦法・強擦法のように手掌や手指を用いて,なでたり,押したり,さするもの,揉ねつ法のようにつかんで揉む方法,指によって持続的,間欠的に圧迫を加える圧迫法や関節を屈伸させる伸展法がある.いずれも筋緊張を取り鎮静作用や血液循環の促進作用がある.一方,スポーツ現場では,リズミカルに叩く叩打法,細かくふるわせて振動を与える振せん法が用いられることもある.これらは筋の興奮作用を起こすため,積極的な運動療法を行う場合には有効である.リラクゼーションは基本的には自己の上肢,肩甲帯の筋の収縮,弛緩によって頚部,肩甲帯のリラックスを得る方法である.自己のリラクゼーションは筋肉の再教育を促し,理学療法を円滑に進めるうえで重要であり,マッサージ後に指導する.

【2】運動療法

(1)可動域

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