診療支援
治療

変形性肩関節症
Osteoarthritis of glenohumeral joint
松橋 智弥
(北新病院 上肢人工関節・内視鏡センター〔札幌市東区〕)

【疾患概念】

 変形性肩関節症は,中高年の肩関節の痛みと動きの制限の数ある原因の1つである.肩関節は膝や股関節などの荷重関節に比較し,罹患率はそれほど高くはない.また,欧米に比較しても本邦において一次性肩関節症の罹患率は少ないが,近年増加傾向にある.変形性肩関節症は他の関節と同様に,明確な原因がない一次性肩関節症と,外傷や疾病に続発する二次性関節症に分類される.二次的変形性肩関節症の原因として,手術後,広範囲腱板断裂,化膿性肩関節炎,上腕骨頭壊死,上腕骨近位端骨折,および神経病性関節症(Charcot関節)などが挙げられる.特に近年は,高齢化社会に伴い,広範囲腱板断裂に続発する関節症(cuff tear arthropathy)の頻度が増加している.

【臨床症状】

 変形性肩関節症の主な症状は,運動時もしくは安静時の疼痛と関節破壊による可動域制限である.肩関節の疼痛は,いわゆる頚部から肩にかけての痛み(これらの多くは頚椎由来の場合が多い)というよりも,腋窩から肩関節の外側に痛みを訴える例が多い.また著明な水腫,もしくは血腫を伴うこともある.


画像所見

 単純X線では,一次性の変形性肩関節症は上腕骨頭や肩甲骨関節窩の変形や骨棘を認め,関節裂隙の狭小化を認める(図11-27b).腱板断裂後関節症では,上腕骨頭が上方へ偏位し,肩峰-骨頭間距離が狭くなる.関節症が進行すると骨頭は肩峰と擦れるようになり,上腕骨頭が大腿骨頭のような形状に変化する(図11-27c).上腕骨頭壊死は進行期では関節面陥凹像が認められる(図11-27d).神経病性関節症では上腕骨頭が消失していたり,関節内の大小多数の遊離骨片が存在している場合など,疼痛の程度と画像所見が一致していないことが多い(図11-27e).


治療

 一次性の変形性肩関節症や,ステロイドやアルコール性上腕骨頭壊死など,腱板断裂がなく腱板機能が温

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