診療支援
治療

上腕の解剖
Anatomy of the arm
中川 泰彰
(国立病院機構京都医療センター 統括診療部長〔京都市伏見区〕)

 ここでは,上腕の手術に関係する主な筋肉と神経について解説する.


1.上腕二頭筋

 上腕二頭筋は,近位は長頭が肩甲骨関節窩上方に,短頭が烏口突起に付着している.遠位は尺骨近位に付着している.長頭の断裂が多く,このとき,結節間溝に腱が認められないことが多い.遠位での断裂もまれに存在し,自験例での陳旧例では,図12-1のような画像となる.


2.大胸筋

 大胸筋では,上腕および肩関節の手術では,上腕骨側付着部に遭遇することが多い.術野の展開のためには,この付着部でいったん切離し,最後に縫合すると問題ない.


3.上腕三頭筋

 上腕三頭筋は,遠位の付着部は肘頭であり,上腕骨遠位の手術では,上腕三頭筋の内外を剥離して上腕骨にアプローチすることが多い.外側には危険な構造物はないが,内側には後述するように尺骨神経があり,注意を要する.


4.腋窩神経(C5,6)

 後神経束から分枝する.上腕骨近位端や肩関節の前方アプローチで,腋窩神経に遭遇することがある.この神経は,三角筋内側面を後方から前方に向かって横走している.したがって,三角筋をスプリットして上腕骨外側を露出するアプローチでは,肩峰から5cm遠位までは腋窩神経を傷つけることはないが,それ以上スプリットすると傷つける危険性が出現する.


5.筋皮神経(C5,6)

 外側神経束の一部から構成される.筋皮神経は烏口上腕筋を貫き,上腕二頭筋と上腕筋間を遠位外側へと正中神経よりもさらに外側を走行する.烏口上腕筋へ筋枝を出した後,上腕二頭筋へ筋枝を出す.したがって,反復性肩関節脱臼の手術時にBristow法などの烏口突起移行術を行うときに,烏口突起および共同腱を翻転させすぎると,筋皮神経麻痺が起こることがある.自験例で2例経験している.この神経の本幹は上腕二頭筋と上腕筋間を走行し,上腕筋へ筋枝を出す.その後は前腕外側皮神経となる.


6.正中神経(C5~8,Th1)

 外

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?