診療支援
治療

上腕部近位部骨折
Proximal humeral fractures
水掫 貴満
(南奈良総合医療センター リウマチ・運動器疾患センター長〔奈良県大淀町〕)

【疾患概念】

 上腕骨近位部骨折は大胸筋付着部より近位の骨折を指し,骨粗鬆症との関連が強く,大腿骨近位部骨折(頚部骨折含む),橈骨遠位部骨折とともに代表的老人骨折の1つといえる.

【頻度】

 全骨折の4~5%で,上腕骨骨折全体の45%を占めるが,老年層ではさらに発生頻度は高くなる.

【病型・分類】

(1)Neer分類(図12-2)

 骨頭,大結節,小結節,骨幹の4つのsegmentの組み合わせで表現され,簡便かつ骨頭の血流の状態を予測し,治療方針の選択に役立つ包括的分類法である.Segmentが相互に1cm以上離開するか,45°以上の回旋転位をした場合に限り,転位骨片と認識され,それ以外はminimally displaced fractureとして取り扱う.

(2)AO分類

 Neer分類同様,転位骨片の数を重視するとともに,関節内・外骨折と区別することで骨頭の血流状態を重要視した分類である.

【発生機序】

 転倒による低エネルギー外傷が最も多い.若年者ではスポーツや交通事故が原因となることもある.受傷機転の多くは長軸方向に加わる介達外力であるが,直達外力が作用して本骨折を認めた場合は,肩甲帯部の複合損傷の合併を疑う必要がある.


問診で聞くべきこと

 受傷機序,既往歴(合併疾患),受傷前の活動性,家族構成(介護者の有無).


必要な検査とその所見

(1)X線撮影:肩関節内旋位正面像と肩甲骨関節窩に平行に撮影したTrue-AP像の2方向撮影

(2)CT:特に3D-CT像は骨折型を正確に評価するために不可欠な検査である.

(3)MRI:腱板断裂や病的骨折が疑われる症例では施行する.


診断のポイント

 血管・神経損傷の有無を確認する.特に脱臼を伴う場合は腋窩神経麻痺に注意する.骨折部の病型分類を正確に行うことで予後を予測し,患者背景を加味して治療方針を決定する.


専門病院へのコンサルテーション

・血管・神経損傷を認め

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