【疾患概念】
上腕骨小頭の骨端核が軟骨を跨いだ反対側の上腕骨の薄い骨片を伴って折れる骨折で,5~6歳が好発年齢である.転位が少ないものは数週の外固定で治癒するのであるが,初期転位が小さくても実は不安定で,外固定中に転位が増大して偽関節となる場合がある.偽関節になると,数十年後に外反肘,尺骨神経障害を生じる恐れがある.骨折の不安定性を決めるのは関節面に達する軟骨骨折の有無であるが,これは単純X線写真やCTではよくわからない.したがって「少しでも転位があれば手術する」方針が世の中に広まり,偽関節の発生が激減した.
【分類】
Jacobの分類として,関節軟骨が破断していないstage Ⅰ,関節軟骨が破断したstage Ⅱ,外顆がひっくり返ったstage Ⅲの三段階があちこちに書かれている.しかしJacobの原著で述べられていることは,関節軟骨が破断していなければ(図12-4a図),外顆の外側シフトが起きず,関節軟骨が破断していれば(図12-4b図),外顆の外側シフトが起きて偽関節になるので手術が必要だということである.
上腕骨小頭の骨端核が健側と比べて1mmでも外側シフトしていれば,関節軟骨は破断しているのである.Weissらは骨折部の転位が2mmを超える65例に関節造影を行って,関節面の軟骨が破断していないことを確認している.彼らの研究によれば,関節面の軟骨が破断していない症例では全例で骨折部の転位が4mm未満であり,関節面の軟骨が破断した症例は全例骨折部の転位が4mm以上であったという.
必要な検査とその所見
単純X線写真は肘関節2方向を基本とするが,転位が小さい場合は斜位像で骨折線がわかりやすい.小児のX線を見慣れていても,小腕骨小頭の微妙な外側シフトがあるかどうか知るために健側のX線写真も撮影したほうがよい.
関節面の軟骨が破断しているかどうか知るには関節造影を行うかMRIを