【疾患概念】
上腕骨内側顆骨折は,上腕骨の滑車の一部あるいは全部と内側上顆全体および内側顆骨幹端(metaphysis)を含む骨折であり,小児で比較的頻度の高い上腕骨内側上顆骨折と異なり,すべての年齢できわめてまれな骨折である.小児の場合,Salter-Harris Ⅳ型の骨端線離開に相当し,上腕骨滑車核の出現時期(女性で7~11歳,男性で8~13歳)より前に本骨折が生じると,診断は困難なことが多い.
【病態】
Milchは,骨折線の走行によりtypeⅠ(simple fracture)とtypeⅡ(fracture dislocation)とに分類している.TypeⅠは,滑車中央溝(central groove of the trochlea)から内側骨幹端へ向かい,typeⅡは,上腕骨小頭滑車溝(capitulo-trochlear sulcus)から滑車の大部分あるいは全体を含み内側骨幹端へ走る.TypeⅡでは,内側顆骨片は滑車切痕(尺骨)の中に残り,上腕骨中枢が外顆骨端核とともに脱臼する形を取りやすい.
必要な検査と診断のポイント
上腕骨内側骨幹端に骨折線の明らかな症例では,単純X線像のみで診断は可能であるが,上腕骨滑車核の出現する以前の症例は,内側骨幹端の骨片がきわめて薄く,また滑車関節面の評価が不能なため,確定診断には関節造影やMRIが必要となる.骨片の回転転位や脱臼骨折を生じていると,尺骨神経の嵌頓が生じている場合もあり神経症状に留意する.
治療方針
関節面の転位が残存すると関節の変形や可動域制限を生じるため,解剖学的整復が必須であり,保存的治療は,転位の軽微な症例に限られる.観血的整復固定術に際しては,内側アプローチにて骨折部を展開する場合が多いが,成人例においては関節面の正確な整復を直視下に確認するため,肘頭骨切りによる後方進入が用いられることもある.固定方法と
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