診療支援
治療

肘関節の機能解剖
Clinical anatomy of the elbow joint
今谷 潤也
(岡山済生会総合病院 副院長〔岡山市北区〕)

 肘関節の支持機構は骨,軟骨からなる骨性構造と,靱帯,筋,腱などからなる軟部組織構造に二分され,これらはお互いに関連しあって機能している.


1.肘関節の骨構造

 肘関節(elbow joint)は,上腕骨遠位端と尺骨および橈骨近位端で形成されている.上腕骨遠位端の骨性構造は,tie archといわれる関節面がlateral columnとmedial columnに挟まるトライアングル構造となっており,前方には橈骨窩と鉤突窩が,後方には肘頭窩がある.腕尺関節はいわゆる蝶番関節で,上腕骨軸に対して関節面部分は6~8°外反,約5°内旋している.一方,腕橈関節は橈骨頭と上腕骨小頭とで形成される球状関節である.また,近位橈尺関節は橈骨頭とlesser sigmoid notchとで形成され,橈骨頭は正円ではなく楕円であり,その長軸はlesser sigmoid notchに対して回内・外中間位で直交する.肘関節伸展,前腕回外位で上腕と前腕のなす角を肘外偏角(carrying angle)といい,男性で6~11°,女性では12~15°外反している.正常以上に肘外偏角が増加しているものを外反肘,肘外偏角が0°未満のものを内反肘とよぶ(図13-1).


2.肘関節の靱帯構造

 内側側副靱帯(medial collateral ligament;MCL)は上腕骨内側上顆と尺骨を連結し,主に外反ストレスに対抗する靱帯構造であり,前斜走線維(anterior oblique ligament;AOL),後斜走線維(posterior oblique ligament;POL),横走線維(transverse ligament;TL)からなる.なかでもAOLは最も強靱な靱帯構造で,肘関節のprimary stabilizerとも称され,内側上顆基部より起始し,鉤状突起内側のsublime tubercl

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?