【疾患概念】
転倒・転落し,肘伸展位で手をついて受傷する.小児ではほとんど橈骨頚部骨折であり,成人では橈骨頭骨折が多い.
【病態】
外反強制と軸圧によって骨折が生じる.外反力が大きいと,上腕骨内側上顆骨折・尺骨近位端骨折や内側側副靱帯損傷を合併することがあり,Jeffery型損傷とよばれる.Mayo Clinicからの成人橈骨頭骨折333例の報告では,39%に他の部位の骨折あるいは軟部組織損傷を合併し,14%が脱臼に合併していたとしている.橈骨頭骨折,尺骨鉤状突起骨折,内側側副靱帯損傷(あるいは肘関節脱臼)の組み合わせは予後不良になりやすく,terrible triadとよばれる.また,骨間膜損傷が生じ,遠位橈尺関節脱臼を合併する場合があり,Essex-Lopresti損傷とよばれる.
【臨床症状】
外傷後に肘関節痛を訴える.橈骨頭頚部に圧痛を認める.
必要な検査とその所見
単純X線肘関節正・側2方向撮影を行う(図13-4a,b図).手術を行う場合,CT撮影を行えば転位の詳細は一目瞭然である(図13-4c図).
診断のポイント
(1)橈骨頚部骨折
転位がある場合,骨頭関節面の傾斜角度は橈骨の回旋肢位によって異なるため,斜位撮影を行い最大角度を推測する.この転位は小児の骨折においても自然矯正されないため,15°以上の場合,整復を行う必要がある.
(2)橈骨頭骨折
Mason-Morrey分類(Ⅰ型:転位がほとんどない,Ⅱ型:骨片の転位あり,Ⅲ型:粉砕骨折,Ⅳ型:肘関節脱臼などに合併)が有用である.Ⅰ型に対しては保存療法,Ⅱ~Ⅳ型に対しては手術を行う.
治療方針
【1】橈骨頚部骨折
(1)保存療法
骨頭関節面の傾斜角度が15°未満の場合,当初1週間は上腕から手までの肘屈曲位でのギプスシーネ固定を行い,その後,肘関節90°位で肘上から手関節近位までシリンダーキャスト固定(前腕部はギプスをゆるく巻く