診療支援
治療

上腕骨外側上顆炎
Lateral epicondylitis
和田 卓郎
(済生会小樽病院 病院長〔北海道小樽市〕)

【疾患概念】

 肘関節外側に疼痛を訴える疾患で,テニス肘ともよばれる.上腕骨外側上顆に起始する前腕伸筋群,なかでも短橈側手根伸筋の腱付着部症(enthesopathy)である.腱付着部の変性,腱線維の断裂,線維芽細胞や毛細血管の増生などが認められる.難治例では滑膜ひだ,関節軟骨変性,輪状靱帯の損傷などの腕橈関節内病変がみられる.長期の慢性疼痛例では中枢感作が関与する.

【臨床症状】

 30歳代後半~50歳代に好発し,男女差はない.テニス,バドミントンなどのラケットスポーツでの発症頻度が高い傾向にある.肘関節外側に疼痛を訴え,強い握り動作,タオルを絞る動作で疼痛が誘発される.


問診で聞くべきこと

 疼痛部位,疼痛が誘発される動作,肢位を問診する.発症時期,罹病期間,疼痛の推移,安静時痛の有無など疼痛の性状も確認する.弾発現象は滑膜ひだの存在を疑う.


必要な検査とその所見

(1)誘発テスト

①wrist extension test(Thomsen test):肘伸展,前腕回内位で抵抗を加えながら手関節を伸展させると疼痛が誘発される.

②middle finger extension test:肘伸展,前腕回内位で抵抗を加えながら中指を伸展させると疼痛が誘発される.

(2)画像診断

 単純X線検査では異常がないことが多いが,上腕骨外側上顆の伸筋腱起始部に石灰化がみられることがある.難治例のMRI検査では,伸筋腱起始部の高輝度変化や軽度の関節内水腫が認められる.


鑑別診断で想起すべき疾患

 変形性肘関節症,橈骨管症候群.


診断のポイント

 臨床症状,上腕骨外側上顆に圧痛,誘発試験が陽性で変形性関節症,橈骨管症候群が否定できれば,診断できる.罹病期間,治療歴から難治性か否かを判断する.


専門病院へのコンサルテーション

 6か月以上の保存治療が無効で,症状の強い難治例は手術治療を考慮し,専門施設に紹介する.


治療方針

 

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