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治療

前腕の解剖
Anatomy of the forearm
二村 昭元
(東京医科歯科大学大学院 運動器機能形態学講座 教授)

1.前腕屈側

【1】浅層の筋群

 尺側手根屈筋は,上腕骨頭と尺骨頭を有し,両頭間を尺骨神経が通る.

 長掌筋は,屈筋支帯の表層を経て手掌腱膜に至る.長掌筋は1割で欠ける.

 橈側手根屈筋は,尺側手根屈筋に隣接して上腕骨内側上顆より起始する.

 浅指屈筋の起始は上腕頭と橈骨頭に分けられ,両頭間を正中神経が下行する.浅指屈筋を構成する筋束は,浅層と深層に分けられ,浅層は中指と環指への腱に続き,深層は示指と小指の腱へと至る.

 円回内筋は上腕骨頭と尺骨頭を有し,両頭間を正中神経が通る.尺骨頭は約6%に欠損するとされる.

【2】動脈と神経

 上腕動脈は,腕橈関節の前面で橈骨動脈と尺骨動脈に分かれる.橈骨動脈は上腕動脈の走行のほぼ延長線上にある.橈骨神経の浅枝と伴行して腕橈骨筋と円回内筋の停止の層間を通り,前腕遠位部では橈側手根屈筋の外側を走る(図14-1).

 尺骨動脈は,円回内筋の尺骨頭深層を経て浅指屈筋と深指屈筋の間を尺側へ走り,尺骨神経と伴行して尺側手根屈筋と深指屈筋の間を走行する.手首では尺側手根屈筋尺側手根屈筋と深指屈筋の間で観察できるが,尺側手根屈筋の筋性部に覆われるため,触知する脈拍は強くない.

 橈骨神経は上腕遠位で深枝と浅枝に分かれる.浅枝は橈骨動脈と伴行し,腕橈骨筋の深層を走る.前腕遠位で浅枝が腕橈骨筋腱の背側から現れ,皮神経になる.深枝は回外筋貫通後,後骨間神経を分岐する.後骨間神経は骨間膜の背側を長母指伸筋に覆われて走行する.

 尺骨神経は尺側手根屈筋の上腕頭と尺骨頭の間を走行し,前腕の中程で尺骨動脈に接する.

 正中神経は,円回内筋の上腕骨頭と尺骨頭の間を貫いた後に,浅指屈筋の背側に入り込み,手首の近位で浅指屈筋の橈側かつ長掌筋と橈側手根屈筋との間に出現する.

【3】深層の筋群

 深指屈筋と長母指屈筋は,前腕の骨と骨間膜より起始している.

 浅指屈筋の腱は基節骨の前で二分して,深指屈

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