診療支援
治療

前腕骨骨幹部骨折
Diaphyseal fracture of the radius and ulna
江尻 荘一
(いわき市医療センター手外科・四肢機能再建学講座 教授〔福島県いわき市〕)

【疾患概念】

 前腕の回内外運動時には,比較的直線状の尺骨を軸として外側凸の生理的弯曲を有する橈骨がその周囲を回旋する.骨折による変形は,前腕の回内外や隣接関節の運動制限を生じるため,正確なアライメントの修復が原則である.


診断のポイント

 本症が疑われたら,単純X線前腕2方向撮影で骨折型を評価する.分類はAO分類を用いる(図14-2).Monteggia脱臼骨折やGaleazzi脱臼骨折の見逃しを避けるため,必ず肘関節と手関節を含めて撮影する.小児では,若木骨折や急性塑性変形を考慮し,健側X線写真との比較が推奨される.合併症としてコンパートメント症候群を念頭におき,手指の運動,知覚,血流障害の有無は必ず確認する.


治療方針

 成人では,橈骨か尺骨のみの単純骨折で,角状変形10°以内,整復位保持が可能な安定型であればギプスによる保存療法が可能である.しかし,腫脹の軽減による再転位,偽関節の危険性,早期のリハビリテーションや社会復帰を考慮すると手術治療が望ましい.小児では,自家矯正力に応じて10歳までは角状変形15~20°以下,11歳以上では10°以下が保存療法の目安である.回旋変形は自家矯正しないため手術適応である.


保存療法

 徒手整復はX線透視下で行う.整復順序は,牽引により短縮を,骨折部の直接圧迫により角状変形を,最後に回旋変形を整復する.整復位が得られたら,肘90°屈曲位,前腕回内外中間位,手関節中間位で上腕からMP関節近位までのギプス固定を行う.後療法は,週1回のX線評価を行い,腫脹軽減に応じて適宜ギプスを更新する.固定期間は,成人や10歳以上では5~8週,年少児では4~6週を基本とし,骨癒合状態に応じて適宜調整する.


手術療法

 整復不能例や不安定型骨折,橈尺骨両骨骨折,開放骨折が適応である.強固な内固定が必要で,成人では3.5mm,7穴以上のLCPプレートを使用する.横骨折で

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