【疾患概念】
橈骨遠位端骨折で,遠位骨片が背側に転位する骨折である.交通外傷.スポーツなどで受傷する場合もあるが,大部分は骨粗鬆症を基盤とした骨脆弱性骨折である.近年,粉砕関節内骨折が増加傾向にある.
【頻度】
橈骨遠位端骨折の大部分を占める骨折.
【分類】
橈骨遠位端骨折のユニバーサルな分類法であるAO分類では,関節外骨折はAに,関節内骨折ではCに相当する.
診断のポイント
単純X線側面像で遠位骨片が背側に転位している.ただし,関節内骨折では骨片の粉砕,転位の状態の評価が必要で,CT像での3DとMPR像を確認する.特に,頻度的には少ないが骨折部が関節近傍に生じる遠位縁部骨折に対する治療法選択には必須である.
専門病院へのコンサルテーション
不安定型Colles骨折は手術適応であり,専門施設へのコンサルトが推奨される.特に,遠位骨片掌側の長軸長が7mm未満の遠位縁部骨折では手術的治療も難易度が高く手外科専門施設へのコンサルトが推奨される.
治療方針
転位を認めるすべての症例に対して愛護的な整復が必要になる.ガイドラインにおいても青壮年においては,整復後のdorsal tilt10°以上でulnar varianceが健側比2mmを超える場合や,関節内骨折でgapやstep offが2mm以上あれば手術適応である(図14-5a,b図).また,高齢者では許容範囲は広くなるが,過度の背屈転位は外観上の変形や回旋制限を残すため活動性が高く健康な高齢者は青壮年と同等に判断する.また,不適切な保存治療は,手指拘縮や複合性局所疼痛症候群(complex regional pain syndrome;CRPS)などの合併症を誘発する可能性があり,判断に悩む症例は手術的治療が優先される.
保存療法
整復は長軸方向に10秒程度持続的に牽引し,中手骨基部を背側より掌側へ押しながら手関節を掌屈する.固定肢位は
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