診療支援
治療

橈骨神経麻痺
Radial nerve palsy
柿木 良介
(近畿大学 教授)

【疾患概念】

 橈骨神経麻痺は,整形外科外来診察でたびたび遭遇する疾患である.骨折,切創などによる橈骨神経への直接損傷,上肢への外力,腫瘍などによる神経への圧迫によって発生する絞扼性神経障害および原因不明の特発性神経障害に分けられる.

 橈骨神経の直接損傷は,直ちに神経縫合などの処置が必要になる.絞扼性神経障害を起こす場所としては,上腕骨橈骨神経溝とFrohse's arcadeが最も多い.橈骨神経は,上腕三頭筋に枝を出した後,上腕中央近位で上腕骨橈骨神経溝を上腕骨に接して回旋し上腕外側に出て,腕橈骨筋に枝を出す.そのため上腕中央部に外力が加わると,橈骨神経が上腕骨に強く押しつけられて麻痺を起こす.特に上腕骨を手枕にして熟睡すると,目を覚ましたときに橈骨神経麻痺が完成していることがある(Saturday night palsyとよばれる).また肘関節橈側前面では,橈骨神経は回外筋の下面に入っていくが,この部分の回外筋腱性部は,Frohse's arcadeとよばれている.この部分は肘関節包の直上にあり,ガングリオンなどが発生しやすい場所でもあり,橈骨神経の運動枝である後骨間神経が絞扼を受けやすい部分である.

 特発性後骨間神経麻痺は,麻痺の発生前に肩甲帯,上肢にかけて疼痛を自覚することが多く,疼痛が和らいだ頃より突然,後骨間神経麻痺症状を呈する.麻痺発症前,やや風邪気味であったとか,疲労していたなどという患者も多い.近年,特発性後骨間神経麻痺では,肘関節中枢の橈骨神経の一部の神経束に,くびれを伴った変化を認めるという報告が増えてきた(図14-10).くびれは1つのときから複数個のこともある.神経痛性筋萎縮症の類縁疾患とも考えられていて,何らかの免疫学的炎症が発生の機序に関与していると考えられている.また特発性後骨間神経麻痺では,さまざまな程度の尺骨神経や正中神経麻痺を合併するこ

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