1.手根管症候群
【疾患概念】
手関節部において背側の手根骨と屈筋支帯の間に形成される手根管が,腱鞘滑膜炎,占拠性病変,変形などのために相対的に狭小化し,手根管内圧が上昇することにより正中神経が圧迫されて発症する.絞扼性末梢神経障害のなかで最も頻度が高く,中高年の女性に多発する.病因としては特発性のものが多いが,腱鞘炎,手の過度の使用,妊娠時の浮腫,骨折・変形癒合やKienböck病などの骨病変,ガングリオンなどの占拠性病変,長期血液透析によるアミロイドーシスなどがある.
【臨床症状】
母指から環指にかけてのしびれや疼痛を認める.症状が進行すると母指球筋が萎縮し,母指対立運動(つまみ動作)が困難になる.また,夜間や明け方にしびれが増強する傾向がある.
問診で聞くべきこと
手のしびれの部位,夜間や頻繁に手を使った際にしびれや痛みが増悪するかどうか,病状が進行すると母指球筋萎縮が出現し,つまみ動作がしにくくなるため,日常生活で何が不自由かを問診で聴取する.
診断のポイント
(1)誘発テストおよび徴候
①正中神経圧迫試験:手関節部で正中神経を皮膚の上から持続圧迫すると症状が増悪する.
②手関節伸展試験:手関節背屈で症状が増悪する.
③Phalenテスト:手関節を1分間掌屈位に保つと症状が増悪する(図14-11図).
④Tinel様徴候:手関節掌側を叩打すると正中神経領域の手指に放散痛がある(図14-12図).
⑤perfect O sign:母指対立運動が障害されるため,患者に母指と示指で円を作るよう指示すると,きれいな円を作ることができない(図14-13図).
(2)単純X線検査
骨折・変形癒合,骨病変や石灰沈着物の手根管内での存在をチェックする.通常の正面像,側面像のほかに手根管撮影が有用である.
(3)電気生理学的検査
客観的診断,治療効果の判定に用いる.特に神経伝導速度の測定が有用である(知覚神
関連リンク
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