【疾患概念】
手根骨骨折中最多で60~70%を占める.見逃されやすい一方で難治性であり,注意を要する.偽関節は変形性手関節症に至る.
分類はHerbert分類があり,骨折部位,転位,新鮮か陳旧かで分類される(図15-6図).近位部骨折は転位がなくても不安定なType Bである.
【病態】
手関節背屈位での軸圧により生じ,転倒やコンタクトスポーツで相手に打ち付けた際などに受傷する.偽関節例が再受傷で発覚することも多く,問診では以前の手関節外傷歴,手関節捻挫と診断されたことはないかを確認する.
必要な検査とその所見
典型的には手橈側タバコ嗅ぎ窩に腫脹,圧痛がある.舟状骨遠位部骨折では,掌側舟状骨結節部,逆に近位部骨折では,手関節深屈曲位で橈骨Lister結節の遠位橈側に圧痛があることがある.
単純X線撮影,特に舟状骨撮影(手関節尺屈位での正面像)を行うが,それでも25%で骨折線が描出されない.そこで,身体所見で疑わしい症例はthumb spicaキャスト固定を行い,2週後に再度撮像し診断するのが古典的な手法である.ただ,近年はCT,MRIへのアクセスが容易であり,直後にCT,MRIを撮像することも多い.CT,MRIのどちらが優れているかは,結論は出ていない.
診断のポイント
初期単純X線ではわかりづらいため,とにかく「疑うこと」が肝心である.
専門病院へのコンサルテーション
粉砕型新鮮骨折,陳旧例,偽関節例は,手術難易度が高く,また経過も必ずしも良好でないことから,手外科専門医への紹介が望ましい.
治療方針
【1】保存療法
Herbert分類A1,A2は保存療法が可能である.受傷後3週以内に治療を開始できた場合は,90%以上の確率で骨癒合が得られるとされる.母指の固定,肘上か肘下固定か,などの結論は得られていない.最低6週間の固定が必要といわれ,骨癒合の程度をみて期間を延長する.骨癒合は8
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