【疾患概念】
de Quervain(ドケルバン)病は,長母指外転筋腱と短母指伸筋腱が走行する伸筋腱第1区画に生じる狭窄性腱鞘炎である.
【臨床症状(病態)】
橈骨茎状突起部に腫脹や,物を把持した際などの疼痛が出現する.
幅広い年齢層に生じる.有病率に関しては男性0.5%,女性1.3%との報告がある.また,女性では出産,授乳に伴っての発症が知られている.
伸筋腱第1区画内には長母指外転筋腱と短母指伸筋腱との間に隔壁がある場合があるが,de Quervain病では隔壁の存在が多いことが報告されている.
腱鞘は肥厚し,病理学的には変性やムコ多糖沈着がみられる.
問診で聞くべきこと
仕事や趣味での手の使用状況,妊娠・出産の有無を確認する.
必要な検査とその所見
(1)単純X線
de Quervain病では通常異常所見はないが,鑑別のため近接する母指手根中手(carpometacarpal;CM)関節症,橈骨舟状骨間の変形性関節症の有無を確認しておく.
(2)超音波検査
腱鞘の肥厚の程度,区画内の隔壁の有無を評価できる.
診断のポイント
圧痛点と誘発テストから診断は比較的容易である.誘発テストではEichhoff(アイヒホッフ)テスト〔いわゆるFinkelstein(フィンケルシュタイン)テスト〕(母指を中に握りこんだ拳を作り,手関節を尺屈するテスト)で疼痛が生じる.
鑑別疾患で想起すべき疾患
母指CM関節症との鑑別が必要であるが,圧痛の局在により鑑別は可能である.
治療方針
【1】保存療法
生活指導,安静,消炎鎮痛薬投与,ステロイド腱鞘内注射が行われる.大部分の患者は保存治療で改善する.出産後のde Quervain病では授乳終了後,自然軽快が期待できる.安静目的には母指から手関節にかけての装具固定を行う.疼痛が強い場合にはステロイド腱鞘内注射を検討する.トリアムシノロン薬またはデキサメタゾン10
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