診療支援
治療

内反手
Club hand
射場 浩介
(札幌医科大学 准教授)

【疾患概念】

 手関節が橈屈位を呈する先天異常疾患(図15-14)であり,橈側列形成障害(radial deficiency)という.先天異常分類マニュアル(日本手外科学会)で,「Ⅰ.形成障害 B.長軸形成障害 1.橈側列形成障害」に分類される.発生頻度は20,000万出生に1人であり,男性に多く,両側性に多い.四肢,心血管系,泌尿器系,消化器系の異常を合併することや症候群(VATERおよびVACTERL連合,Fanconi貧血,Holt-Oram症候群など)の一症状としてみられる場合が多く,全身の病態把握が重要である.


診断のポイント

 母指を中心とする橈側指,橈骨,肘に異常が出現する可能性があるため,診察時には手関節以外に手指や肘関節の異常に注意する.手関節橈屈(内反手,図15-14)の原因となる橈骨形成障害は,X線で橈骨の遠位成長抑制(1型),低形成(2型),部分欠損(3型),全欠損(4型)の4つに分類される(BayneとKlug分類).また,大部分の症例では手関節が掌側に脱臼していることに留意する.母指の形成障害を合併する頻度が高く,母指形成不全の評価も同時に行う必要がある.Blauth分類(1型:母指球筋の低形成,2型:母指球筋低形成+母指内転拘縮,3型:第1中手骨近位部の部分欠損,4型:浮遊母指,5型:母指欠損)を用いた評価法が広く用いられる.


治療方針

 生下時より可及的早期に,手関節橈屈変形に対して愛護的な徒手矯正と装具治療を行う.生後6か月以降で手関節の不安定性や橈屈偏位の改善,伸筋腱や屈筋腱の滑走距離確保を目的に手関節の安定化術を行う(主に中心化術).一方,手関節安定化術後に手関節可動域が低下するため,肘関節可動域制限がある症例では手術適応を慎重に検討する.母指形成不全を認める症例では,手関節安定化後に母指対立再建術や示指の母指化手術を行い,握りやつまみ動作の

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?