診療支援
治療

尺骨突き上げ症候群
Ulnocarpal abutment syndrome
建部 将広
(名古屋大学大学院医学系研究科四肢外傷学寄附講座 准教授)

【疾患概念】

 尺骨が橈骨に対して相対的に長い状態にあった場合,手関節にかかる荷重の多くが尺骨を介して伝わる状況となる.その結果として,三角線維軟骨複合体(triangular fibrocartilage complex;TFCC)損傷を含め尺側手関節部の障害・疼痛を引き起こす.このような状況を尺骨突き上げ症候群と称する.


問診で聞くべきこと

 尺骨突き上げ症候群の診断においては,問診は重要であり,発症のタイミング(外傷性か否か),日常生活での手の使用状況(利き手/職業/趣味/スポーツ活動など)を必ず確認する.


必要な検査とその所見

 触診にて疼痛部位の確認を行う.部位については手関節のランドマークを熟知し,解剖学的位置と疼痛部位を確認しつつ行う.遠位橈尺関節(distal radioulnar joint;DRUJ)不安定性の確認やulnocarpal stressテストなど,各種誘発テストを組み合わせて診断を行う.画像診断としては単純X線像・MRI/CT・血液検査・関節造影・関節鏡検査を行う.通常は単純X線像にてulnar varianceをはじめとした手関節のアライメントを確認し,変性所見があれば確認する.手関節の肢位によりulnar varianceは変化することが知られており,前腕中間位での撮影を基本とすべきとされている.MRIでTFCCをはじめとする軟部の状態を確認する.病態が進行すると尺骨頭とそれに対する月状骨尺側に信号変化を生じてくる.CTでは骨性の変形などの異常の有無について確認する.MRIなどで滑膜炎の所見や関節液の貯留などを認める場合は,血液検査にて関節リウマチをはじめとする各種炎症性疾患の確認が必要となる.関節造影・関節鏡検査は侵襲的な検査となるが,特に関節鏡検査については現状手関節痛の最終手段とされている.


診断のポイント,鑑別疾患で想起すべき疾患

 尺側手関

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