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トピックス 手関節TFCC損傷に対する診断と治療
森友 寿夫
(大阪行岡医療大学理学療法学科 教授)

 難治性手関節尺側部痛の多くは尺側手根伸筋(extensor carpi ulnaris;ECU)腱鞘炎,三角線維軟骨複合体(triangular fibrocartilage complex;TFCC)小窩部断裂,TFCC実質部損傷(尺骨突き上げ症候群を含む),の3疾患である.おおまかな診断には誘発テストが有用である.

 まずcarpal supination test(肘90°屈曲,前腕回外位で患者の手を把持し過回外させたときに激痛が生じれば陽性とする)でECU腱鞘炎を鑑別する.さらにECU腱鞘内へのステロイド薬と局所麻酔薬の注射は治療のみならず確定診断に有用である.ECU腱鞘炎ならば注射後数分後にcarpal supination testが陰性となる.

 陰性にならない場合はTFCC損傷を疑う.TFCC損傷の誘発テストではulnocarpal stress test(手関節尺屈位で他動的に軸圧をかけながら回内外すると有痛性クリックを生じる)がよい.ややグリップさせながら回外位で行うと痛みを誘発しやすい.遠位橈尺関節(distal radioulnar joint;DRUJ)不安定性テストを行うと実質部損傷では不安定性は生じないが,小窩部断裂では尺骨が背側へ亜脱臼する方向へ不安定性を認めることが多い.小窩部断裂か実質部損傷かを鑑別するにはMRIより関節造影CTが有用である.造影剤にキシロカインを混ぜDRUJ内を麻酔すると上記の誘発テストが陰性になることを確認する.除痛されない場合はECU腱鞘炎や月状三角骨骨間靱帯損傷などのDRUJ関節外病変を疑う.さらにDRUJ関節造影CTでTFCC小窩付着部に造影剤が貯留する所見があれば小窩部断裂とほぼ確定診断できる(図15-10).

 TFCC損傷の保存治療はステロイドのDRUJ内注射および手関節尺屈防止TFCC装具を約1か月装着する

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