診療支援
治療

手の解剖
Anatomy of the hand
二村 昭元
(東京医科歯科大学大学院 運動器機能形態学講座 教授)

1.手掌

【1】皮下・浅層

 手掌と足底の皮膚には,ほかの部位の皮膚とは異なり,表面に指紋や掌紋という皮膚紋理(dermatoglyphics)がある,表皮の角質層が厚い,毛と脂腺がない,汗腺が豊富,色素が乏しい,知覚性の神経終末に富む,などの特徴を有する.また,疎性の皮下組織が少なく,皮膚の表面に対して垂直に走る結合組織線維(皮膚支帯)により,真皮が下層の腱膜に固く密着して,物を握るときに皮膚がずれないようになっている.

 手掌腱膜は長掌筋の停止腱膜で,手掌では4尖に分かれて母指を除く示~小指の基部に向かって放散する.

 短掌筋は手掌腱膜の尺側縁より起こり,小指球の皮下に停止する.小指を強く外転させると,短掌筋の収縮によるシワが小指球上に観察できる.短掌筋はヒトにだけ存在し,一般の霊長類では欠如している.これは握る機能に伴って発達したと考えられている.

【2】動脈と神経

 浅掌動脈弓は主として尺骨動

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