【疾患概念】
ボタン穴変形とは手指変形の1つで,近位指節間(proximal interphalangeal;PIP)関節が屈曲位,遠位指節間(distal interphalangeal;DIP)関節が過伸展位を呈する変形である.
【病態】
ボタン穴変形は,複雑な構造をもつ指伸展機構のアンバランスによって生じる.正常解剖ではPIP関節の伸展に働く伸筋腱中央索が,何らかの原因により機能しなくなり,PIP関節が屈曲位を取ることにより変形が始まる.これと同時に,伸筋腱側索はPIP関節の掌側に転位するために,本来はPIP関節およびDIP関節の伸展に作用するべき側索が,PIP関節屈曲,DIP関節過伸展に作用することとなる(図16-7図).2本の側索の間から基節骨頭がボタンの穴から飛び出すようにして変形するため,ボタン穴変形とよばれている.
伸筋腱中央索が機能不全に陥る原因として最も多いものが関節リウマチであるが,外傷による伸筋腱の断裂によっても生じる.関節リウマチでは,PIP関節の滑膜炎が持続することにより伸筋腱中央索が弛緩する.
問診で聞くべきこと
関節リウマチの既往について聴取する.また関節リウマチの診断がついていない場合には,他の手指関節にも変形や腫脹が生じていないかを確認する必要がある.外傷による腱断裂が原因の場合には,受傷後早期には変形は生じず,数週間経過して変形が徐々に進行することも多いので,過去の突き指などの外傷歴についても聴取する必要がある.
必要な検査とその所見
関節の変形や骨折(伸筋腱の剥離骨折)の有無を確認するために,単純X線撮影は必須である.多関節に腫脹や変形を認める場合には関節リウマチを強く疑い,血液検査(CRP,リウマトイド因子,抗CCP抗体など)を行う必要がある.PIP関節に明らかな腫脹を触知する場合には,超音波検査で活動性の滑膜炎であるかを評価することも有
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