診療支援
治療

白鳥のくび変形
Swan-neck deformity
岩本 卓士
(慶應義塾大学 専任講師)

【疾患概念】

 白鳥のくび変形とは手指変形の1つで,近位指節間(proximal interphalangeal;PIP)関節が過伸展位,遠位指節間(distal interphalangeal;DIP)関節が屈曲位を取る変形のことである.外見が白鳥のくびに似ていることからよばれ,スワンネック変形とも言われる.

【病態】

 白鳥のくび変形は,複雑な構造をもつ指伸展機構のアンバランスによって生じる.原因として最も多いものが関節リウマチであるが,外傷による終止腱の断裂(マレットフィンガー)によっても生じる.このほか手の内在筋の痙性,浅指屈筋腱の断裂など,いくつかの原因によって生じうる.

 関節リウマチでは,中手指節間(metacarpophalangeal;MP)関節の滑膜炎が持続することにより伸筋腱が脱臼し,MP関節の伸展不全が生じる.これにより代償的にPIP関節は過伸展し,DIP関節関節は屈曲位となる(図16-8a).外傷では終止腱の損傷によりDIP関節の伸展が不可能となり,伸展力がPIP関節に集中することから過伸展を生じる(図16-8b).疾患により原因となる関節が大きく異なることに注意が必要である.


問診で聞くべきこと

 関節リウマチの既往について聴取する.また関節リウマチの診断がついていない場合には,他の手指関節にも変形や腫脹が生じていないかを確認する必要がある.外傷による腱断裂が原因の場合には,受傷後早期にはDIP関節の伸展不全のみでPIP関節の過伸展は生じないが,数週間経過してPIP関節の過伸展変形が徐々に進行することが多いので,過去の突き指などの外傷歴についても聴取する必要がある.


必要な検査とその所見

 関節の変形や骨折(伸筋腱の剥離骨折)の有無を確認するために,単純X線撮影は必須である.多関節に腫脹や変形を認める場合には,関節リウマチを強く疑い,血液検査(CRP,リウマ

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