【疾患概念】
ローラーやプレスの機械に巻き込まれ手を引き抜く際に,手や指の皮膚が手袋状に皮下で剥脱される開放創のことである.指輪が末梢側に引っぱられることにより,指にこの損傷が発生すると,ring injuryとよばれる.剥脱された組織は挫滅されており,健常血管を探して血流再建を行っても再開されないことも多く,予後は不良である.
【臨床症状】
開放創を呈し,完全に剥脱している場合は容易に診断可能であるが,不完全な場合は受傷原因から推測する必要がある.
問診で聞くべきこと
受傷形態,機械の種類,受傷時間,喫煙歴,飲酒歴,抗凝固薬服用の有無,糖尿病など内科的疾患の有無などである.
必要な検査とその所見
①単純X線検査:巻き込まれた機械の種類によっては骨折を伴うこともある.前腕遠位に創が及ぶ場合は,肘関節まで損傷される場合があるので,肘関節まで撮影する.
②CT:骨折を合併する場合は,骨折型を把握し骨接合方法決定のために必要であり,単純X線検査では判読できない小骨片を確認できる.
診断のポイント
受傷形態と創の状態から予想する.不完全皮膚剥脱の場合は,初診時に末梢の血流障害について診断する.正確な剥脱範囲と骨関節,神経,腱,血管の合併損傷については術中に判断することになる.
専門病院へのコンサルテーション
剥脱範囲と骨関節,神経,腱,血管の合併損傷によって予後が異なる.これらを修復するにはマイクロサージャリーと皮弁の技術が必要となるので,手外科医へ早期に紹介する.
治療方針
下記の分類(Kay,1989)にもとづいて治療を行い,予後予測がつく.
Class Ⅰ:不完全皮膚剥脱で,剥脱部位より末梢の動脈および静脈の血行は良好
Class Ⅱ:不完全皮膚剥脱で,剥脱部位より末梢の血行は不十分であるが,骨折の合併はない
A+V:動脈および静脈の血行再建が必要
A:動脈の血行再建が必要
V:静脈の血行再建が