診療支援
治療

指屈筋腱損傷
Laceration of finger flexor tendon
岡田 貴充
(社会保険仲原病院〔福岡県糟屋郡〕)

【疾患概念】

 手指屈筋腱損傷はその損傷部位により治療成績が異なることより,国際分類を用いて損傷部位を分類している.特にZoneⅡは古くから手外科領域の外傷で最も治療が困難なものとして知られていたが,さまざまな手術法・後療法が考案され,その治療成績は安定してきている.ここでは,屈筋腱損傷に対する診断,治療を総論的に述べる.

【病態・分類】

 屈筋腱断裂の診断は比較的容易であるが,治療法や治療成績が腱損傷の状況により異なることからその病態の分類が必要である.下記に示す3つの分類を組み合わせて治療法を選択する.

(1)「損傷部位」による分類

 一般的に国際分類(図16-10)が用いられる.特にZoneⅡは浅指屈筋腱と深指屈筋腱が並走しているため癒着が生じやすく,成績不良となることが多いため,手術・リハビリテーションに専門的治療が必要とされる.

(2)「損傷時期」による分類

 新鮮損傷と陳旧性損傷がある.新鮮損傷に比べ陳旧性損傷では腱周囲の瘢痕や皮膚,関節などの拘縮が生じていることがあり,腱の修復前にこれらの環境を整える必要がある.

(3)「受傷形態」による分類

 鋭利な刃物などによる開放性損傷と,開放創がない状態での閉鎖性損傷(皮下断裂)がある.閉鎖性損傷には,ドアなどにはさむことによる圧挫や骨折後などに生じる外傷性のものと,関節リウマチや化膿性滑膜炎などの慢性炎症や変形性関節症などの骨棘による摩耗で生じた非外傷性のものがある.開放性損傷の場合は開放創を伴うため診断は比較的容易であるが,閉鎖性損傷の場合は診断に難渋することがあり,発症時期・合併症状などこまめに病歴を聴取する必要がある.


問診で聞くべきこと

 開放性損傷であれば,開放創を生じた状況(鋭利な物による損傷かどうかなど),その際の手指の肢位(屈曲位か伸展位かなど:腱の近位断端の位置のおおよその推測のため),指先のしびれ・知覚鈍麻の有無(腱

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