【疾患概念】
伸筋腱損傷は屈筋腱損傷と比較して治療は一般的に容易と考えられているが,
①固有指部背側では複雑な伸展機構が存在している.
②屈筋腱と比較して,少ない滑走距離で関節可動域を生むため,わずかな短縮が過伸展変形や屈曲制限の原因となる.
③屈筋腱と比較して,短期間で筋短縮性拘縮が生じる.
④腱自体が薄いため,強固な縫合を施行しにくい.
などの伸筋腱特有の問題もあり,その治療は決して容易ではない.ここでは伸筋腱損傷の診断,治療を総論的に述べる.
【病態・分類】
伸筋腱断裂の診断は比較的容易であるが,治療法や治療成績が腱損傷の状況により異なることから,その病態の分類が必要である.屈筋腱同様,下記の3つの分類を組み合わせて治療法を選択する.伸筋腱は,筋短縮性拘縮が早期に発生し縫合困難となることがあるため,受傷時期の同定が重要である.
①「損傷部位」による分類:一般的に国際分類(図16-11図)が用いられる.
②「損傷時期」による分類:新鮮損傷と陳旧性損傷がある.
③「受傷形態」による分類:開放性損傷と開放創がない状態での閉鎖性損傷(皮下断裂)がある.
伸筋腱・閉鎖性損傷のうち,特徴的なものを下記に列挙する.
(1)ZoneⅠ:腱性槌指
手指を伸展した状態で過屈曲が強制されることで,終止伸筋腱が断裂し槌指変形が生じる.
(2)Zone Ⅲ:中央索断裂→ボタン穴変形
突き指などで中央索が断裂することがある.受傷直後は変形がなく放置され,変形が生じてきてから受診することも多い.中央索断裂を診断する方法としてElsonテストがある.
(3)Zone Ⅴ:伸筋腱脱臼
中手指節(metacarpophalangeal;MP)関節部で矢状索が断裂し,総指伸筋腱が指を曲げた際に尺側に亜脱臼もしくは脱臼する.
(4)Zone TⅤ:橈骨遠位端骨折に伴う長母指伸筋腱断裂
橈骨遠位端骨折が発生してしばらくした後,List
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