診療支援
治療

ばね指(手指屈筋腱の狭窄性腱鞘炎)
Snapping finger
面川 庄平
(奈良県立医科大学 教授(手の外科学講座))

【疾患概念】

 手指の屈筋腱と靱帯性腱鞘(A1プーリー)のサイズミスマッチにより,腱滑動が障害される狭窄性腱鞘炎である.手指を伸展する際に,腫大した屈筋腱が肥厚した腱鞘に引っ掛かり弾発現象を生じるため,ばね指と呼称される.

【病態】

 屈筋腱と腱鞘のサイズミスマッチは,過度に手を使用すること(overuse)による腱実質の変性(friction tendinopathy)・腫大,靱帯性腱鞘の血管増生・肥厚に起因する.滑膜性腱鞘は炎症(tenosynovitis)・浮腫を生じ,腱鞘内圧が上昇する.腱実質は弾性(elasticity)が低下し,ときに縦断裂がみられる.

【臨床症状】

 中手指節(metacarpophalangeal;MP)関節掌側中央に疼痛を訴え,同部に圧痛と硬結(Notta's node)を認める.指の他動伸展により疼痛が増悪する.検者がMP関節掌側を押さえながら指の自動屈伸をさせると,同部に圧轢音(crepitation)を触知する.ときに近位指節間(proximal interphalangeal;PIP)関節にも疼痛や伸展不全を訴える.


問診で聞くべきこと

 ばね指は糖尿病患者で高率に発症し,重症化しやすいので注意が必要である.しばしば多数指に生じ難治性である.また,手指屈筋腱鞘の浮腫を生じ,腱鞘内圧が上昇するという共通の病態を有する手根管症候群との関連が指摘されている(「手根管症候群」の項を参照).手根管症候群の併存も念頭に置いて診療する.


必要な検査と所見

 PIP関節の屈曲拘縮や疼痛を訴える場合には,単純X線検査で変形性関節症の有無を確認する.腱滑動障害を確認するために,超音波検査が有用である.屈筋腱実質の腫大,A1プーリーの肥厚が確認できる(図16-12).


鑑別診断

 多数指罹患症例では手のこわばりを訴えるため,関節リウマチとの鑑別を要する.


診断のポイント

 指

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