診療支援
治療

先天性握り母指症
Congenital clasped thumb
高木 岳彦
(国立成育医療研究センター 診療部長〔東京都世田谷区〕)

【疾患概念】

 母指中手指節(metacarpophalangeal;MP)関節が屈曲,指節間(interphalangeal;IP)関節が伸展された状態で,母指が内転屈曲位をとり,手掌内で母指を握りこむような病態である.母指の伸展機構の欠損をはじめ,母指球筋,第1指間(母指示指間)とそれに伴う軟部組織の軽度の異常が言われている.先天性多発性関節拘縮症,風車翼手,痙性麻痺などに伴う場合も多い.

【病型・分類】

 Mihは拘縮のない型をⅠ型,拘縮のある型をⅡ型,さらに先天性多発性関節拘縮症などを伴う型をⅢ型として分類している.


鑑別診断で想起すべき疾患

 母指の屈曲変形ということで,ばね指と混同される場合があるが,ばね指はIP関節が屈曲位となる点で異なる.


診断のポイント

 母指が内転屈曲位でMP関節が自動伸展せず,母指が手掌の上にある,いわゆるthumb in palmの状態となっている.円筒形あるいは円錐型物体を把持させると,手根中手(carpometacarpal;CM)関節が外転せず,それを代償するかのように母指は回外位をとり,MP関節が屈曲された状態にあるのが特徴である.その把持状態で単純X線写真を撮影して評価することもある.


治療方針

 特に合併症を伴わない軽症のものであれば,多くは保存療法で改善するため,1歳半~2歳程度までは,保存療法で経過をみる場合が多い.合併症を伴う重症のもの,保存療法で奏効しないものについては,手術療法を検討する.


保存療法

 生後半年未満であれば,装具を装着するにも母指が小さいため,それまでは他動伸展運動を家族に指導する.その後短対立装具を装着させる.昼間装着を拒む患児には,夜間のみ装着させて,昼間は他動伸展運動を続けてもらい,母指の伸展外転位を保持させる.


手術療法

 保存療法に奏効しない場合,手術療法が選択される.第1指間の皮膚の短縮がみられるため,Oppo

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